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ロシアについては国内的にも強硬な、独裁国家的なイメージが付きまとうが、ロシアなりのポピュリズムが存在していることを忘れるのは危険であろう。
金融危機、原油価格の下落を契機として、ロシアの対外姿勢が一段と硬化することになれば、資源開発に要する技術の移入も困難となり、経済成長再開のシナリオはより厳しいものとなる可能性がある。
国と呼ぶのは適切ではないが、グローバル金融危機のような、外部環境の変化の影響を受けやすい一つの典型例として、同国を取り上げる。
二○○八年の韓国は、ウォンの下落とインフレ圧力の増大で始まった。
年初九○○台だったウォンの対ドルレートは二月には一五○○にまで下落し、特に夏場以降の下落は九七〜九八年のアジァ通貨危機を雲髭とさせる劇的なものであった。
一つには、年初から進んだ急速な資源価格の上昇により、交易条件が悪化すると共に、インフレが高進した。
九七年まで黒字を確保してきた経常収支が二○○八年一〜三月期から赤字に転じ、資源の輸入依存度が高く、交易条件の悪化に脆弱な国際収支構造が露呈することとなった。
もう一つは、ニ○○六年以降、韓国の企業、金融機関の対外債務が増大傾向にあり、外部環境の悪化が進む中で、そのスムーズな借り換えが困難化する可能性が市場の不安を煽った。
こうしたなか、当然の帰結として資本の流出が生じ、経常収支、資本収支の双方から韓国の外貨準備が減少に転じた。
二○○八年ニ月末時点ではニ○○五億ドルと、三月のピーク(二六四ニ億ドル)から四・一%減少している(ただし、同三月末にはニ○一二億ドルと若干回復)。
韓国銀行(中央銀行)は急激なウォン安回避を目的に為替介入を行っているが、その中で逐次投入される外貨準備はウォン安阻止には明確な効果を発揮しない一方で、減少する外貨準備が、将来的な債務返済の可能性やウォンの価値に対する市場の懸念を強め、むしろウォン安圧力を強めるという悪循環をもたらしてきたと考えられよう。
こうした中で「危機再来」が必ずしも荒唐無稽なシナリオとは言えなくなったのだが、アジア通貨危機当時と今では、いくつかの重要な違いがある。
一つは、韓国銀行による積極的な金融緩和である。
アジア通貨危機の際には、外貨準備のバッファーが限られていたこともあり、危機の発生がIMF傘下入りに直結し、厳しい財政・金融の緊縮政策を迫られた。
韓国経済は、後に劇的な内需の収縮を経験したのだが、その再現は避けられている。
利上げによって資本逃避、為替レートの下落を食い止めることは難しいという過去からの教訓も、積極的な利下げの背景にあろう。
もう一つの違いは、IMF以外のセーフティネットの存在である。
二○○八年一○月二九日、韓国銀行は米FRBと三○○億ドルのスワップ協定を結んでいる。
この活用により、韓国銀行は外貨準備を目減りさせることなく、市場のドル買いウォン売り圧力(韓国からの資本逃避)に対処できることになる。
それ以上に、こうした見せ金の存在が、市場の不安を鎮める効果が期待できよう。
同様のスワップ協定は、日本や中国との間でも協議されており、ここでも、アジア通貨危機の教訓は活かされていると見ることができる。
こうして、危機の再現は避けられる可能性が高いと判断されるが、当面の経済が厳しいものになることは、韓国も同じである。
やや長期的な観点から韓国経済を捉えると、九七年から九八年のアジア通貨危機を経て、経済の牽引役が固定資本形成から輸出にシフトしたことが注目される。
固定資本形成のGDP比は、九六年の三七・五%から二○○七年の二八・八%に低下し、一方、財・サービス輸出のGDP比は同じ期間に二七・九%から四五・六%まで上昇している(二○○八年一〜九月では五五・七%と更に上昇)。
そして、輸出先としてアメリカや日本の位置付けが大きく低下し、BRICS四カ国やサウジアラビアなどの新興国が台頭している。
先進国向けに比較的安価な製造業製品を輸出するというモデルから、新興国に対して相対的に高度な製品を供給するモデルへの転換が進んできたと見なせよう。
これを端的に表すのが、二○○五年頃からの、対外直接投資の急増である。
最終製品を輸出するだけではなく、新興国を中心とした海外に生産拠点を設け、そこへの資本財の供給などが増加する形で輸出構造が多様化している。
確かに、インドやロシアなどにおける、韓国家電製品の浸透力には目を見張るものがある。
以上のように、個々の国を点検して、改めて確認されるのは、グローバリゼーションの深化がこれまでの各国の成長を支えてきたことである。
リスクマネーの供給が新興国の成長を促し、新興国の成長率の相対優位がより多くのリスクマネーを内に呼び込む。
鶏と卵のような関係だが、この好循環が新興国にとってのグローバリゼーションの要諦であった。
そして、韓国のような先行国から見れば、新興国の成長を買う(例えば企業が新興国に進出する)ことによって、新興国の成長に寄与し、結果として自国の輸出依存度を強めてきたと見なしえる。
これは日本、ヨーロッパ先進国にも言えることであろう。
198桁に近い増加を維持している。
現在が世界同時不況ではなく、新興国の景気の悪化が相対的に軽微にとどまるのであれば、リスク分散効果は韓国経済の下支え役を果たしただろう。
しかし既に見たように、そうした展開は期待薄である。
むしろ、総体としての輸出依存度の高まりが、既述の金融緩和等、自国の経済政策の景気浮揚効果を減じる懸念がある。
新興国の成長を買うという意味では、韓国は日本よりも先に行っており、「新興国」の段階を脱した工業国のあり方として、一つのモデルを提示しているとも考えられる。
しかし金融危機に続いて現在進行中のグローバルな経済危機は、そうしたモデルの有効性を否定するほど厳しいものと見ざるを得ない。
外需依存度の高さは既に見た新興国(BRI)をはるかに上回っており、外部環境の好転待ちの状況におかれることとなろう。
新興国と先進国の成長トレンドがデカップリングしているように見えるのは事実だとしても、それは両者のカップリングの結果として起こったことである。
そして、先進国からのリスクマネーの供給が途絶えれば、新興国の投資主導型成長も持続不能になる。
中長期的な観点から見れば、新興国の成長再開が従前通りのパターンで実現する必然性はない。
しかし、先進国からのリスクマネー供給なしに投資主導型成長を実現させ得るのは一部の資源大国くらいのものであろう。
国内貯蓄を豊富に抱える中国でさえ、外国企業の高いプレゼンスが長きに亘る高度成長を支えてきたのは周知のことである。
グローバルな資源配分が減速すれば、それだけ成長率は抑えられる。
当面は公的資金による民間資金の補完がグローバルな潮流になるだろうし、新興国のインフラ投資などを支えるために、そうした措置は必要である。
ただし、新興国を成長軌道に乗せることに失敗してきたのが公的資金の歴史であったことも再確認されるべきである。
繰り返しになるが、近年の新興国の成長を支えてきたのは投資であり、それは投資率の二極分化(新興国の投資率が上昇する一方、先進国のそれは停滞)を伴ってきた。
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